創作サークルぼんやりクラブ」へようこそ!

2013年


12月13日


8月上旬


夏期休暇中だったが、8月初めの週に一度、登校日があった。

葉一は、教室で提出する課題を教卓に置いてから、席に戻り、少し後ろを見回した。

周囲の生徒会話を聞くところによると、菊岡は結局ハワイ旅行出かけたそうで、しばらくは国外にいるようだった。

ほのかの方は、母方の祖父母の家に訪ねているそうで、今日出席できないとのことだった。

長い集会が終わった後、長いホームルームが続いて退屈だったが、授業がないことが救いだと葉一は思っていた。

昼前に放課となり、葉一は久しぶりに小さな孤独を覚えた。

二人の帰省が待ち遠しい思いで窓の外の青空を眺めていると、無人になった教室に先生が入ってきた。

担任の深枝先生は、眼鏡をかけた若い女性の新米教師だった。

普段よくうっかりミスをするので、今も何か忘れ物を取りに来たのだろうと葉一は思った。

「あら、桐谷君、どうしたの?」

「あ、いえ、ちょっと」

先生は教卓の上の課題の山を手にしたあと、葉一の傍に立って、野外を眩しそうに見つめた。

「桐谷君、元気だった?」

「えっと、まあまあ、かな」

「そっか。まあまあ、ねえ」

葉一の言葉を噛みしめるように頷く先生は、出し抜けに「そうそう」と声を上げて尋ねきた。

何かを思い出したようだった。

「桐谷君、最近は、菊岡君や茂上さんと仲良くしてるみたいね」

学校がある日は、授業の予定を記す「連絡帳」に一日の出来事を書き、先生に提出することになっていた。

二人も葉一のことをその日記の欄に綴っていたらしく、それを特別に教えてもらったときは、涙が出そうな程嬉しかった。


「それでね、少し訊きたいことがあるの」
先生の語勢がほんの少しだけ弱まったような気がした。

葉一は、大方大事な話だろうと察して、気を引き締めることにした。

「茂上さんのことなの」

「えっ」

思わず声を漏らす葉一に、これは二人だけの秘密にしてねと注意をして、先生は一呼吸おく。

「実は、彼女の連絡帳の日記なんだけど、何も書いていないことが多いの。
桐谷君と遊んだって文章を目にするようになって嬉しく感じていたのだけど、空白が続いたり……ぐちゃぐちゃな鉛筆の線が描かれていたり……茂上さんの放課後の様子が分からなくなっていて、先生、心配していたの」

葉一は何も答えられない。

内心でひどく驚いていたのだ。

今まで、幾度となく言葉を交わしてきたにも関わらず、ほのかはそれを語ることはなかった。

秘密がある、ということは直接話を聞いていた。

葉一の知らぬ一面がある、ということは漠然とだが理解していたつもりだった。

しかし、その「秘密」があるために、彼女は苦しんでいるのではないか……。

葉一には、それが最も気にかかることだった。

脳裏には、ほのかの笑顔が浮かびが上がっていた。

ほのかちゃん……。

「桐谷君、何か分からないかな。遊んでいて気になったこととか疑問に思ったこととか、どんなことでもいいのだけれど」

「あの……」

そう言ってから、葉一は躊躇した。
Y山のことをここで話してしまって、いいのだろうか。

心中でそんな自問が繰り返されていた。

あそこは立ち入り禁止区域であるものの、ほのかにとっては、
きっと大切な場所だ。

葉一にしても、Y山は大事な居場所であったし、ほのかと自分だけの秘密の隠れ家なのだと強く心の支えにしている場所でもあった。

だが、もしほのかが何らかの事情により苦境を強いられているのなら、
進んで手助けしなければ、という思いもよぎっていた。

沈思黙考の末、ついに答えが分からなくなった。

自分がどうすればよいのか、
一度、ほのかに訊いてみようと思った。

「ごめんね、悩ませてしまって。でも、ありがとう。先生の方からも、お母さんや茂上さん本人に話を訊いてみるつもりだけれど、もし、何か分かったらこっそり教えてね」

先生は、残りの夏休みも元気に過ごしてねと言って、教室を去っていった。

「あ、先生……!」

葉一は、教卓に再び忘れ去られた課題の山を手に取った。

その時、課題のわら半紙とは質を異にする紙の存在に気がついた。
静かに翳る ed画像
「なんだろう」

わら半紙の束の中頃に挟まれていたのは、B5サイズほどのコピー用紙だった。
青いボールペンで綴られた走り書きは深枝先生の文字のようだ。

難しい漢字が多く、全てを解読することはできそうにないが、一つだけ分かった。

先生は、調べ物をしていたらしい。

紙の底部に、本と著者の名前が記されている。

『幻想大全』ーー著 茂上義之


茂上、という名字……これは偶然だろうか。

著者は、もしかすると、ほのかの家系に属する人物なのかもしれない。
一体、誰なのだろうか。

タイトルに至っては、ますます分からない。

「幻想」とは、なんだろう。

幻想、この言葉が頭からこびりついて離れなかった。

どうしても気になったので、葉一は、町営図書館に赴き、幻想大全を紐解くことにした。

課題の山を職員室で先生に手渡し、すぐに学校を出て、そのまま図書館へ向かった。

静かに翳る 図書館外観画像

到着してから、すぐに探しにかかったが、どうもそれらしい書籍が見つからない。
静かに翳る 館内画像
仕方がないので職員の方に調べてもらい、ようやく幻想大全を手元に置くことができた。
静かに翳る 幻想大全画像

俄に胸がどくどくと高鳴った。

この中には一体、どんなことが書き記されているのだろうか。

未知なる領域への一歩を踏み出すが如く、葉一は、その分厚くやや変色した表紙を開き、一ページ一ページ目を通していく。



;--------------------

;選択肢

;--------------------



読むことができない暗号の数々。

唯一の頼りになりそうなのは、どこか恐怖を潜ませている挿絵。

幻想遊び。

静かに翳る 館内画像
よく分からないものの、葉一の胸は得体の知れぬ世界を垣間みた気分がして、
じわじわと込み上がるような興奮と、
その裏側に潜むものーー現実がそれらの謎の携える漠然とした恐怖に浸食されていくような、不気味さを覚えていた。


ここに記されるものは伝承であり、史実通りの内容が述べられているかは判然としなかった。
葉一には一種の物語と解され、つまりは作り話なのだという判断が下されていた。

だが、妙に生々しい印象を覚えた。
その印象が重なり、大きな衝撃として幼い葉一の心を揺るがしていた。
まるで、何か自分の一番大切なものが脅かされたような気分だった。

そっと、幻想大全をもとあった書棚の隙間に戻し、もう一度、背表紙の文字を見た。
この茂上平之助という人物は、何者だろう。
同じ名字を持つほのかと何か関係があるのだろうか。

先生は、ほのかの身になんらかの異変が起きていると考えたからこそ、この幻想大全に至るまでのメモをあの紙に書き付けたのだ。
ならば、少なからず何か関与するものがあるのだろう。

町営図書館を離れる葉一は、胸に立ち込めるような不安を募らせた。

あんな不気味なものに関わりがあるなんて……まるで。
葉一は自身を脅かすタムロ部屋を思い浮かべる。
自分が胸の奥にしまい込んでいたように、ほのかもまた大きく深い闇を抱え込んでいるのだと思った。

それが、彼女が未だ葉一に告げぬ、秘密なのかもしれない。





静かに翳る エッグ

没になった「幻想大全」のくだりだね☆

静かに翳る MADOROMI

連絡帳を出さなくなったほのかを心配し、その原因を探っているうちに、茂上一族の秘密に近づいていった深枝先生だが……ここまで行動力があれば、ほのかを救うために多くの人に協力を求めてHAPPYENDにまでもってきそうな勢いだったので、没にした。

静かに翳る MADOROMI

しかし、苦しむほのかが完全放置という状況はまずいと思って、その代役となる「麻野」という男を登場させた。麻野は2015年の後期に誕生した、生まれたてほやほやの男で、深く人物設定がされていない。

静かに翳る エッグ

(ほやほやのおとこ……)

静かに翳る MADOROMI

悔しくもアリキタリな「びっくり系の演出」となったあの《馬》のショックを強めるために馬のようなのんびりとしていて優しい男というイメージに決めたけれど、のんびり、おだやか系の動物で「馬」って、合致しているのかな? まあ、でも、馬のホラー顔素材を発見してしまったので仕方ない。

静かに翳る 幻の麻野

こんにちは。ホラー顔素材です。無論、勝手にホラーチックにしたのは、MADOROMIさんです。

静かに翳る MADOROMI

しかし、麻野周りは、なかなか大変だったよ……。orz そもそも説明、補強のためだけにキャラを使うって、うーん、、あんまり……ね?

静かに翳る エッグ

ぼくのこと?

静かに翳る 動物人間

お前は、川に流されるだけのキャラ。

静かに翳る エッグ

えーん、えーん

静かに翳る MADOROMI

だから、もっと麻野にも人間味というかキャラクター性とそれを引き立てるシナリオを用意したほうが絶対よかった……。登場する以上、そこには魂があるんだよ

静かに翳る 幻の麻野

ん?

PAGE TOP ▲

Copyright © 2016 ぼんやりクラブ All Rights Reserved.