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2013年


7月31日


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過去編
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<●>茂上義之


<●>葉一

・接点(5、6月)

不良な兄の存在
川でほのかと出会う


・学校でのあれこれ(6、7月)

不良兄、ボロボロになって夜中帰ってくる。


・夏休み(8月)

不良兄、仲間を引き連れてくるので、家にいたくない。

ミニトマトの描写。
永遠のメロディーを教わる
その時、ほのかは、プレゼントできなかったもの(手紙)を
渡そうとするが、できなかった。

ここで初めて、このY山に来ている理由を語る
ほのかの父親は、Y山で死んだ。

おばあちゃんは、死んだってだけ言ったけど、

本当のことを教えてくなかった。

でも私は知っている。


父の声が気がしてY山に入る。


私は川の中で音楽をきいた。

あれは父が演奏していたピアノの音色だったのかもしれない。

でも、知る由はなかった。


「悲しかった。けど、あたし、すごく腹がたったの」

「それでね、あたし、馬鹿だよね?
もう一度、川に飛び込んだの」
「どうして?」
葉一は驚いて訊ねる。
「また……お父さんが助けてくれるかもって思ったの」
「ほんと、馬鹿みたいでしょ?」

「僕、馬鹿だと思わないよ」


「葉一くん、優しいんだね」
ううんとかぶりを振った葉一の横でぽつりとほのかは言った。


そしたら、不思議なことが起きたんだとほのかは続ける。
川の中で流れる水の音のその奥から、何かが聞こえた。
それは、音楽みたいだった。
息がもたなくて水面に上がったから、少しの間のことだった
んだけど……でも、それは夢のような心地ちよさがあって、
胸にじーんと響いたの。とても不思議な気分になった。
それが父と関係があるのか考えたけど、よく分からなかった。
だが、ほのかはその水中から耳に、そして心に伝う音楽の存在
に惹きつけられように、毎日Y山に足を運んだ。
あれほど水を恐怖していたことが嘘のようだった。
半ば、未知なる世界へ冒険するような気持ちで、ほのかは川に
潜り、耳を澄ました。

「信じられないでしょ?」

「ううん、きっと聞こえてくると思う」

「信じてくれるの?」


「うん。だって、そんな気がするもん」

「でも、誰にも言わないでね。あ、マニアくんになら、教えてもいいよ」

「マニア? どうして?」

「いつも、一人でいるでしょ?

仲間はずれにされてて……かわいそうだから」


「分かった。あいつ、そのうち誘ってみるよ」



・誕生日会
「葉一くん、放課後、ピアノ屋敷に来て欲しいんだけど……」

「ほのかちゃんも、一緒に来てよ、**くんが僕の誕生日会を
 開いてくれるんだ」

「そうなんだ、でも、あたしはちょっと……」

葉一から視線を少し逸らすほのかは、どこか様子が変だった。

「なんで? 楽しいと思うよ、ケーキとかゲームとかあるし!」

「あたし……いい。ごめん」

少し突き放すように呟き、ほのかは葉一の視界から去った。
置き去りにされた葉一は、戸惑いその場から動けない。
しかし、頭の中で自分の口にした言葉を必死で思い返していた。
もしかしたら、言い方が悪かったのかもしれない。
そのせいで彼女を傷つけてしまったのではないか。
そんな不安が渦巻いていた。
来て欲しかったのに、と内心で溜息をつき、葉一はその胸中で
抱いたものをはっきり伝えればよかったと、深く後悔した。

溺れ死ぬほのか。

学校での訃報のお知らせ。
疑われる葉一。
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フェードアウト
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死んだなんて、嘘でしょ?

嘘だよね……?

葉一は、現実を受け止めることができなかった。

たまらなくなって、走ってほのかの家を訪ねた。

迎え入れてくれた母親の静香に、胸の中で落ち着きを忘れ、忙しなく揺れ動く感情をそのまま
ぶつけた。

突然のことだったが、静香は葉一が理解できるようゆっくりと答えた。

「ほのかはね、Y山にある川で溺れてしまったの」

「Y山の川で……」

葉一は何もない真っ白な世界に放り込まれたようだった。

どんな感情を抱けばいいのか、心でさえ分からないようだった。

ただ、葉一は無力だった。
何もできない、そんな感覚を覚えて初めて、悲しみにた冷たいものが
胸に込み上がった。


ーーほのかは、川で溺れた。

きっと、苦しかっただろう。

水中でもがきながら、必死で助けを求めたに違いない。

「あの日、ほのかは、すごく喜んでいたわ。今日、葉一君の誕生日なんだよって
朝食の用意をする私のところまできて、夢中になって話すのよ。私、なかなか
支度が進まなかったわ」

そう言って、思い返すように静香は視線を遠くに向けて、懐かしむように微笑んだ。

だが、その仕草すべてが寂しげで、葉一は今にも泣き出したい気持ちになった。

「でも、学校から帰ってきたあの子はなんだか沈んでいて、何も言わないまま外に
出て行ってしまったの。朝あんなに元気だったのにってちょっと不思議に思ったけど、
私、深く気にかけずにいた……それが間違いだったんだわ。あの時、私がちゃんと話を
聞いてあげていれば……」


葉一は、涙を押さえ込むように服の袖をきつく握りしめる。

熱いものが流れ出ないよう、奥歯を噛み締めていた。

全てを悟った。

ほのかがなぜ死んでしまったのか。

それは、あの時の放課後。


ーー葉一くん、放課後、ピアノ屋敷に来て欲しいんだけど

ーーほのかちゃんも、一緒に来てよ、**くんが僕の誕生日会を開いてくれるんだ

ーーそうなんだ、でも、あたしはちょっと……

ーー葉一から視線を少し逸らすほのかは、どこか様子が変だった。

ーーなんで? 楽しいと思うよ、ケーキとかゲームとかあるし!

ーーあたし……いい。



あの時、ほのかの言うことを聞いて、Y山に行っていれば、

彼女が川に入ることはなかったかもしれない。
一緒にいれば自分がほのかを
助けることができたかもしれない。
ほのかが死んだのは、自分のせいだ。


ーーごめんなさい。

ーー僕が悪いんです。

葉一は、震える声で、何度も静香に謝罪し、自身を責めた。
静香は葉一の背中を優しくさすりながら、
「いいのよ……大丈夫だからね」

「葉一くんは一つも悪くないんだよ」と語りかけた。

そのあやすような言葉の一つ一つが葉一の胸にじんわりと伝わった。

だが、それでも葉一は自分を許すことができなかった。

帰り際に葉一は、仏壇の遺影の中で笑いかけるほのかを見る。

その横に正座する静香の真似をして、畳に腰を降ろす。
そっと手を合わせた。


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何度も川に潜る。
葉一は放課後は音楽室に通いつめ、書店に行けば、作曲に関する
本を読み漁った。
しかし、たどりつかない。
記憶の中で流れる優しい戦慄に手を伸ばすと、それは
「おい、葉一……」


じわじわ。

不良兄が仲間を引き連れ毎晩のように
酒とタバコに浸りだっていた。
男たちの笑い声。
怒声。

隣室の自室で眠る葉一は、
毎晩、そのうねるような重たい響きを耳にした。

心が荒んでいく。

最後に発狂

「う・・う・・・うううああああああああああああああ!」



Y山で自殺を決意する。


死の淵にたったとき、葉一は幻想の中で、ほのかに会うことが
できた。



死の淵で幻想をかいま見る。

水中から幻想をかいま見る。

ほのかに会いたかった。


求めれば、求める度、旋律は歪み、不協和音を奏でる。

葉一の中の秩序は徐々に湾曲し、いびつな形状を成した。



――葉一くん、


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現在
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<●>茂上静香

「葉一君、いつもありがとうね」

「いえ」

ほのかの10回忌。

静香はこの青年の面持ちを見る毎に、
その青白い肌ににじんで浮かぶような痛烈な想いの存在を感じずにいられない。

彼は、その想いを駆られて、己を失っていた。

その瞳は、何を映しているのか窺い知れない程深い色をしていた。

今という現実にいながら、どこか違う場所に心を置き去りにしてしまっている
ようだった。

私に責任がある。

この子を開放しなければいけない。

まだ葉一は若い。
これから先の未来に少しでも明るい希望を持って生きてほしい。
亡き娘に囚われる彼をこれ以上、苦しませるわけにいかなかった。


「葉一君、もう、疲れたでしょう」

「……」

「もう、楽になってもいいんだよ……?」
「……」

葉一は無言のまま、一礼し茂上家を去った。

「静香、葉一君かえ?」

「ええ。今さっき帰ったわ……」

「あら、まあこんなにも」


玄関の上に置かれたビニール袋には、溢れんばかりの

ミニトマトのパックが詰め込まれていた。

この日が来る度に、静香は悲痛な思いを抱く。

生前の娘と過ごした時間を思い返して、泣き咽び、終日
悲しみ
に暮れることもなくなった。

ただ……彼は、あの日からずっと忘れないでいる。

渡される、ほのかの好物だったミニトマトは、
毎年その数を
増していた。

そんな彼がこの日、我が家に訪れ、言葉数の少ないまま

供物を置いて帰るーーそのことが何より静香の胸を強く
締め付け
ていた。


静かに翳る エッグ

これは、具体的に幼少期の構成を考え始めた頃のテキストだね。

静かに翳る MADOROMI

幻想編とつながる話をもっと入れたかったんだけど、マニアのくだりで精一杯だったよ……。

静かに翳る 幻の麻野

「川のなかで溺れて死ぬ」という展開は元ネタがありそうですね。

静かに翳る MADOROMI

うーん、もしかしたら、「テラビシアにかける橋」や「銀河鉄道の夜」の影響かもしれない。あー、今思えば、テラビシアにかける橋っぽい。茂上家に訪れる深枝先生が、映画に出てきた先生を彷彿させる。

静かに翳る エッグ

※テラビシアの名前が思い出せなくて、MADOROMIが検索かけたときのフレーズがこちらです♪
【貧しい 少年 学校 引っ越してきた少女 洋画】

静かに翳る 動物人間

検索下手くそか。

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